2018-01-01から1年間の記事一覧

超自然概念をめぐる論争③

下の2つの記事の続き(最終回)。 youkai.hatenablog.jp youkai.hatenablog.jp 日本のコンテクストでの超自然概念批判 前回と前々回では、おもに文化人類学(宗教人類学)において、超自然概念がどのような意味で用いられ、どのような観点から普遍的な適用…

超自然概念をめぐる論争②

前回の「超自然概念をめぐる論争①」の続きです。 youkai.hatenablog.jp ある意味、今回が「論争」編かな? 超自然概念の批判 前回の終わりに提示した普遍主義的用法は、自然的/超自然的という存在論的区分が、「それなりのやり方で」(ルース・ベネディクト…

超自然概念をめぐる論争①

妖怪を論じるとき使われることの多い超自然(supernatural)概念。しかし、この概念は本来カトリック神学に由来するものだった。西洋ローカルなこの概念をどれだけ他のコンテクストに広げることができるのか、そもそもできないのかについて、実は(特に人類…

ユキヒラ鍋が陶製からアルミ製になったのはいつか?

「ゆきひら」といえば『食戟のソーマ』の主人公の名字……でもあるが、一般的には調理器具、鍋の一種である。キッチンが使われている日本の家庭ならどこにもあるといっても過言ではない、ポピュラーな道具だ。漢字では行平とも雪平とも書くので、ここではユキ…

近世国学の妖怪論(宣長・守部・隆正)

本居宣長は、上田秋成や平田篤胤とちがって積極的に妖怪的なものを語ろうとはしなかった。いちおう「カミ」の定義のなかで妖怪的なものを列挙してはいるが、付属品的な扱いでしかない。(前に紹介した↓) youkai.hatenablog.jp しかし、門人との問答のなかで…

前期国学の妖怪論

近世国学の妖怪論はどうなっていたのか。平田篤胤が語りすぎたので、一人だけ有名になってしまっているが、前期国学の人々も、当時の多くの知識人と同じように、通りすがりに程度であるが、怪異・妖怪について語っているところはある。ちゃんと調査したわけ…

「妖怪は神経のせい」言説はどこまで遡れるのか?

三遊亭円朝が『真景累ヶ淵』(活字1888)の始めに「幽霊と云うものは無い、全く神経病だと云うことになりましたから、怪談は開化先生方のお嫌いなさる事でございます」と語ったように、「妖怪や怪談なんてものはない!」と否定する言説は明治時代の「文明開化…

国学者は西洋の「天使」(エンゲル)をどう見たか

一昨日、「平田派から柳田國男までの国学に見えたる妖怪論」と称して、現在進行中の某原稿の一部を転載したのだが、そういえば1年ほど前、「異類の会」で発表した時も物集高世を引いていたなあ、と思い出したので、また部分転載してみる。当時の発表タイト…

平田派から柳田國男までの国学に見えたる妖怪論

平田篤胤が今で言うところの「妖怪」に多大な関心を持ち、『鬼神新論』(1805)、『稲生物怪録』(1806)や『仙境異聞』(1822)、『古今妖魅考』(1828)などを著したことは比較的よく知られている。しかし、彼の学統たる平田国学やその周辺の国学者たちも…