妖怪と怪異の民俗学

 2020年後期、某大学(東洋大ではない)で「妖怪と怪異の民俗学」という授業を非常勤で受け持つことになりました。公募が出たとき一部で話題になったやつです。正直、僕以外に応募した人がいるのかどうか分からないぐらいニッチな、しかし僕にとってはこれ以上ないド直球な授業だったからか、無事採用されました。

 この授業は、以前は常光徹先生が担当されていたようです。そのときのシラバスを見てみると、妖怪や俗信について講じられていたみたいです。

 いまだに後期がどのような形態になるか分からず、その点は困っているのですが、それゆえまだ十分な準備もできていないのですが、自分で繰り返し見てやる気を出すため、シラバスをここに掲載してみます。 

妖怪と怪異の民俗学 異なる世界の生き方を探る

授業の概要

 日本列島の人々は、不思議なことや怪しいこと、理解しがたいことを、つねに身の回りに感じながら生きていた。現在、私たちが「妖怪」や「怪異」などと呼んでいるものである。人々はどのようにして、みずからの周囲にうごめく「妖怪・怪異」と関わったり、あるいは避けたりしてきたのだろうか。そうした物事について考えてみることは、人々が日常を生きるうえでの感性や思考、想像力がどのようなものかを理解することにつながる。この授業では、国外のものもふくめ、学問的な妖怪研究を紹介しながら、過去や現在の人々が生きる世界の不思議を読み解き、自分なりの視点に位置づけることを目的とする。

第1回 イントロダクション 妖怪・怪異とは何か?

この授業全体の内容を紹介し、自分たちがもっている妖怪・怪異のイメージを把握する。

第2回 柳田國男の妖怪研究と妖怪収集の時代

20世紀前半の民俗学における妖怪研究を概観する。ヌリカベ、イッタンモメンなど。

第3回 小松和彦宮田登~現代妖怪学の誕生

現在の妖怪研究を生み出した二人の民俗学者の議論を見る。

第4回 古代・中世の怪異とモノノケ

鬼や天狗、モノノケなどの基本的な妖怪が生まれた背景を探る。

第5回 江戸時代の化物と幽霊

河童やろくろ首、見越入道など、有名な妖怪が生まれ、絵画として描かれた背景を探る。

第6回 妖怪にあふれる民俗社会~境界論の視点

民俗学が中心になって調査してきた民俗社会のどこに妖怪が現れるのかを探る。

第7回 キツネはどうやって化けるのか~構造論の視点

もっとも広く知られているキツネの妖怪について、アニミズムや構造論の立場で読み解く。

第8回 妖怪の「意味のなさ」~存在論の視点

妖怪は教訓であるという見方と、それに対する「意味のない」妖怪の話を比べる。

第9回 カッパとポセイドン~昔の人々は妖怪をどう考えたか

19世紀前半の学者たちが、カッパの正体を西洋人に問いかけたエピソードを読み解く。

第10回 多文化の視点①妖怪と妖精

日本の妖怪は日本にしかいないのだろうか。海外の民俗学で取り上げられる妖精(フェアリー)と妖怪を比べる。

第11回 多文化の視点②怪異とモンスター(怪物)

日本の妖怪は英語で「モンスター」と言われることが多い。モンスターとは何なのか、どう妖怪と違うのかを考える。

第12回 なぜ私たちは妖怪を信じなくなったのか?~井上円了と迷信撲滅

現代人の妖怪イメージ「そんなものはいない」が歴史的に作られてきた過程やその意味を見ていく。

第13回 なぜ私たちは今も妖怪を信じているのか?~ネットロアと都市伝説

現代人が「妖怪はいない」と思いつつ、それでもどこかに「いる」と思ってしまうのはなぜかを考える。

第14回 まとめ~妖怪・怪異とは何だったのか?

全14回の授業をまとめ、復習する。

 

 こんな感じです。第6回までは、このテーマなら誰でもやりそうな講義内容ですが、第7回あたりから独自色が出てきます(雲行きが怪しくなってくる、とも言う)。どこかでグリッチの話も入れたいな~。
 とはいえ「民俗学」という枠内では(つまり、あまりポピュラーカルチャーは取り扱わないという立場からは)それほど悪くないというか、「妖怪民俗学」的な軽めの本にそのままできそうな気もします(自画自賛)。

 いずれにしてもまだ準備できていないので、これから頑張ります。はい。ちなみに今のところ受講人数は100人くらいのようです。