オンライン講義のやり方:メモ

 非常勤でやっている講義授業について、いまやっていることをメモしておく。

 まず、オンライン授業の方式については、オンデマンド(録画配信)授業をする先生方が多い印象を受ける。だが、僕は一人でパソコンに向かって話すことに耐えられないので、ライブ授業を選択した。
 加えて、ある調査によると、学生の7割はライブ授業がよいとのことである。授業時間によって生活リズムを整える機能は、講師にとっても学生にとっても無視できるものではない。
 ただし、通信環境や家庭環境その他の事情で授業時間に参加できない学生もいると思うので、授業を録画したものを別に見せることにした。

 第5回まで終えた現状では、実質的な受講人数185人のうち、リアルタイムで参加しているのは130~140人ほど。だいたい4人中3人は授業時間通りに見ていることになる。その他の学生は、録画配信を見ているようだ。

 もともとこの講義授業はスライドを見せて解説を加えるかたちで進める予定だったので、スライドの型はすでに存在していた。そのため、オンラインといっても、新たにやる必要のあることは最小限で済んだように思う*1
 ただしリングライトコンデンサマイクは購入した。初回授業で使ったパソコンの内蔵マイクでは評判が悪かったため。

 一つの授業についてはこのような流れになっている。

 パワポのスライドは先に作っておく。静止画面が何分間も続くのを避けるため、アニメーションを多めに入れる。ただし、大半の通信環境ではカクカクにしかならない。スライドはPDFファイルにして、前日までに学習支援システム(非常勤先はmanaba)にアップロードする。これは要望する学生が多かったため。

 授業を始める。スライドショーは、パワーポイントの機能「録画」で開始する。このとき、学生にどう見えているか/聞こえるかを自分で確認するため、スマホから別のアカウントでウェブ会議室に入り、学生と同じ状態をつくり、スマホのイヤフォンを片耳にさして、自分の声やスライドの状態を確認する。ここでスマホというのは重要で、なぜならパソコンやタブレットのような質の良い環境でなくてもちゃんとなっているかどうか確認できるからである。
 もし聞こえづらかったら、口をマイクに近づける、はっきり発声するなどの調整をする。

 ライブであると同時に録画配信する内容なので、なるべく淀みのないように話す。
 またパワポのせいであるが、録画しながらだと、スライドを切り替える前後で(おそらくスライドごとの音声データが書き込まれる影響で)わずかに音声が途切れる。そのため、切り替える前後では話すのをやめる。
 録画配信には使えない、あきらかに関係のない話をするときは、一時停止する。また チャットで学生からの質問があったらすぐに拾って答えるが、それも後から録画配信を見る学生に分かりやすいように説明を加える。
 アニメーションに加えて、マーカーなどを使って強調したいところをはっきりさせる。その場でイラストを描くのもあり。
 録画機能を使っているときの問題点は、スライドごとに音声が記録されるため、複数のスライドの自由な行き来が制限されるということである。単純に言うと一方通行になり、前のスライドに戻ることができない。どうしても戻りたいときは録画を一時停止するしかないが、そこで話したことは記録されない。
 スライドが終わったら録画を停止する。なお、録画されるのはパワポ内部のスライドと音声だけなので、たとえウェブ会議システムのほうで僕の顔が映っていても、そちらのほうは記録されない。

 授業後、録画したものを動画ファイルに出力する。意外と時間がかかる。次いで、その動画ファイルをYouTubeにアップロードする(限定公開)。YouTubeなのは、見る側で自由に画質の調整ができ、通信料に不安がある学生でも対処できそうだから。また学生がもっとも慣れているプラットフォームだからというのも大きい。
 それが終わったら、学習管理システムで動画の場所を指示する。いまのところ、各動画とも100回前後再生されている。ライブで見られなかった学生以外にも、確認するため見直す学生がそれなりにいるようだ(でも「いいね」は1つしか来てない)。先ほどのアンケート調査でも、9割の学生が講義動画を見たいと書いていたので、ライブ授業でも別途動画配信をしたほうが良いと判断できる。

 練習などをして編集した動画ではないので、言い淀みもあれば言い間違いもあるが、そのあたりの学生からのクレームは今のところない。言い間違いを恐れるため、比較的ゆっくり話すことになる。そのため間延びしたように感じられる学生もいる。そういう人には、Youtube動画を倍速で見てもかまいませんと言ってある。

 というわけで、ライブ授業と録画配信をこうやって組み合わせている。おそらく一番の利点は、動画作成のための時間が授業時間と同一であるため、時間が節約できるというところだろうか。

 以上です。

*1:なお、パワポを使う場合はデュアルディスプレイを強くお勧めする。全画面表示のスライドを「画面共有」することが多いと思うが、2つあれば、もう片方の共有されないほうで細かい裏方の操作可能だからである。録画しない場合でも同じで、「発表者ツール」は使いこなせたほうがよい。せっかくパワポを使っているのに、読み原稿を印刷したものを手元に置いて発表するのは無駄である。