日本怪異妖怪大事典「廣田龍平」担当項目の補遺 前説

少し前に『日本怪異妖怪大事典』がようやく出版社から届いたということで、自分の執筆した75の怪異妖怪項目について、書くときに参考にしたものや、書ききれなかったことについての追加説明みたいなのを書いてみることにする。説明文に書いてあるが事例にないものについての出典・詳細もおぎなってみた。とはいっても内容の多くは訂正事項と懺悔ということになりそうな予感がしている。そういうわけなので、手元に『日本怪異妖怪大事典』があることを前提として書いています。

最初の妖怪名が項目、次が事典のページ数、次が説明文の一文目。

文献の引用は、原則としてその文献にあるとおりの表記・仮名遣いのままである。なので、古典文献が新かな新字体に直されて文献に記されていれば新かな新字体にするし、現代の文章でも旧かななら旧かなのままにしてある。

項目の自己評価
◎→よく書けた
○→事典項目としては水準に達している
●→もう少し調べたほうがよかった
×→書き直したい(泣)

全体として、書くとき参考にしたもの
書くとき・調べるとき、常に手元に置いていたのは、偉大なる村上健司『妖怪事典』(以下「村上事典」と略)、千葉幹夫『全国妖怪事典』、柳田國男監修『日本伝説名彙』、日野巌『動物妖怪譚』、水木しげる『妖怪世界遺産』など。ネット情報としてはWikipedia日本語版、国会図書館、都立図書館、その他多くのページを参考にした。ただし、いずれも文献を見つけるためであって、そのまま引用するためではない。また、ひとつの目標として「Wikipediaに項目があるならば、それよりも濃く。できるだけ初出の文献を探す」を心がけた。


全体の項目に共通する執筆のプロセス
はじめに、軽く執筆プロセスを書いておく。まず編集側から、有名な民俗学専攻の大学院があるところにまとめて(人数に応じて?)項目執筆依頼が来る。同時に、怪異・妖怪伝承データベース(以下、DB)の本体であるカード(以下、DBカード)も項目ごとにまとめて送られてくる。これはオンラインで公開されている情報に加えて、元記事も貼り付けられているという優れもの。このおかげでいちいち元の雑誌に当たらなくてもよい。
このときすでに項目内にどのような事例を入れるかは編者の先生方によってきめられている。たとえば「ひひ」のDBカードには、同じような猿の妖怪「猿神」や「イヒヒ」「ヒイヒイ猿」などのカードもまとめられている。おそらくこのようにして3万余りのカードを1300の項目にまとめるのがこの事典の制作作業の本体だったと思う。僕たちは、あとは事例をまとめる作業をすればいいというわけだ。
もちろんDBカードは完全ではなく、それ自体が他の文献の引用だったりすることもある。そういうとき僕は原典にできるだけ当たったが、ヤカンヅルのように結局見つからなかったものもある。他の執筆者のなかには、それほど原典にこだわらなかった方もいるようだ。
また、項目の字数制限は、大雑把にいうと僕たち下っ端が担当するものの半分以上は「小項目」といって事典の1/3ページ分、つまり1段分だが、いくつかはさらに半分の「ハーフ項目」(最終的に「半小項目」と呼ばれているようだ)、つまり1/2段分だった。この小さな枠内に、妖怪についての説明とその事例を押し込めるというのは存外大変なものである。そのせいで字数オーバーしてしまった項目もいくつかある(単純にいうと、その項目が1段分よりはみ出ている場合は、オーバーしたものである)。

以下、「DBにある」などと書かれているものについては、妖怪名をDBで検索すれば詳細な書誌情報と内容の要約が読めるので、気になる方はそれを参照してください。妖怪名は読みを片仮名にすれば見つかります。