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妖怪と、人類学的な雑記

筑波大学の廣田龍平です。被災地研究・妖怪研究を人類学・民俗学的な方向からやっています。

『現代民俗学研究』第9号に論文が載りました

廣田龍平2017「神なき時代の妖怪学」『現代民俗学研究』9: 43-53

 

要旨の日本語訳は以下のとおりです。

 

 妖怪は日本民俗学の中心的テーマだという一般的な認識があるにもかかわらず、現実にはほとんどこの分野で妖怪研究はなされていない。これを踏まえて、本稿では、どのように妖怪が民俗学から排除されていったのかを、妖怪研究の中心人物である小松和彦の業績を検討することによって論じる。まず本稿では、小松と柳田國男を対比させることにより、小松が多かれ少なかれ自意識的に、妖怪を旧来の民俗学から構造人類学へと移し替えたことを指摘する。彼による妖怪の分析は、妖怪が「他者」の世界に見出されるとみなした点で、きわめて人類学的である。この事実は、小松による(そして柳田による)「自己」理解としての民俗学の定義と鋭い対比をなしている。とはいえ、小松によるもう一つの民俗学の定義が、この移し替えを説明することになろう。それは、民俗学の中心テーマは「神」だというものである。小松の業績を検討することにより、その妖怪論にみられる妖怪と神との連続性という定式が、「他者」の民俗社会には適用できるが、「自己」の現代社会においては適用できない、ということを含意していることを明らかにする。ゆえに、妖怪は小松民俗学から排除されていったのである。