妖怪と、人類学的な雑記

筑波大学の廣田龍平です。被災地研究・妖怪研究を人類学・民俗学的な方向からやっています。

妖怪論文が掲載されました・ウェブ上に公開しました

すでに2か月前の話になりますが、『現代民俗学研究』という雑誌の第6号に僕の論文が載りました。
タイトルは「妖怪の、一つではない複数の存在論―妖怪研究における存在論的前提についての批判的検討―」で、113-128ページに掲載されています。
冒頭の英文要旨を翻訳したものは次のようになります。

 本稿は、近代の民俗学的妖怪研究が前提としてきた存在論的コミットメントを批判的に検討する。学術的な妖怪研究者は、妖怪は超自然的存在であり、妖怪は一般的には実在しない、と想定している。しかし、近代的な研究者のもつ存在論的枠組みを共有しない人々の世界を研究するときの、これらの前提の妥当性は、これまで妖怪研究においてほとんど関心をもたれてこなかった。本稿は、妖怪研究において主流の言説や理論を批判的に検討することにより、研究者が、妖怪を受け入れ共存する人々のパースペクティヴを把握しそこねていたということを指摘する。
 なぜ妖怪研究はこの存在論的コミットメントを前提としてきたのか? そこには、江戸後期から続く歴史的プロセスがあった。 知識人や都市住民らは、徐々に、今で言う「妖怪」が超自然的であり実在しない、と想定するようになっていったのである。19世紀初頭、妖怪の実在性を確保しようとした一部の学者たちは、日本における近代的科学的経験主義の勃興に対して、超自然的な領域を打ち立てようとしていた。さらに、妖怪の超自然性とされるものは、実在を認めない研究者によってもゆるやかに受け入れられていった。本稿はこのプロセスを認識論的切断として捉え、研究者は切断後に生み出された存在論的枠組みをとおしてのみ、さまざまな世界や存在論を理解することができる、と論じる。本稿は、人々が妖怪を受け入れる多様な諸世界を研究者が理解することを可能にする「多元的存在論」モデルを提案する。

ところで、改めて読んでみると、十分論じきれていないところがあったり、参考文献に追加したいものがあったり、後から訂正したい箇所が多く見つかったりしたので、個人的に改稿版を公開します。「妖怪の、一つではない複数の存在論 改稿」です(リンク先はGoogle drive)。雑誌に載ったオリジナルバージョンは、そのうち公式にウェブ上に公開されるそうです。
形式としては、本文や文末脚注はオリジナルのままで(ただし編集部が書式を変更した点は反映されていません)、ページ末脚注に追加した分を載せています。あれこれ雑多に書いた結果、本文よりも長くなってしまいました!!(笑)
注意事項として言っておくと、改稿版に記載された内容は基本的に査読を経ていないうえに、あまり考え抜かれていないので、書かれている内容についての責任は持ちますが、無許可での引用・参照は禁じます。また、予告なく文章が改変されることもあります(すでに1回、大幅に書き直しています)。どうしても引用・参照したい場合は、何らかの手段で僕に連絡をください。ブログのコメント欄でもツイッターへのリプライでもかまいません。