『日本妖怪考 百鬼夜行から水木しげるまで』で論じられている作品

本日刊行されましたマイケル・ディラン・フォスター『日本妖怪考 百鬼夜行から水木しげるまで』(森話社)、読んでみたいけど、どんな内容なのかよくわからない……という人たちのために、各章で取り上げられ、論じられている作品について、主なものを挙げてみ…

マイケル・ディラン・フォスター『日本妖怪考 百鬼夜行から水木しげるまで』

2017年9月8日、森話社より翻訳出版予定。税抜き4800円。 妖怪はどこから生まれ、どこに行くのか? 捕まえようとすると、するりと手から逃れていく妖怪たち。日本人はその妖怪をどのように捉え、描き、表象してきたのか。江戸時代に編まれた百科事典や画集から…

くねくねがブームになるまで

ちょっとした備忘録。「洒落怖」や「エニグマ」はそれぞれオカルト板の有名なスレッド。 2000年3月5日ウェブサイト「怪談投稿」に、「分からない方がいい・・」が投稿される。 2001年7月7日洒落怖6の212に「分からない方がいい・・」が出典を明記せず投稿さ…

『現代民俗学研究』第9号に論文が載りました

廣田龍平2017「神なき時代の妖怪学」『現代民俗学研究』9: 43-53 要旨の日本語訳は以下のとおりです。 妖怪は日本民俗学の中心的テーマだという一般的な認識があるにもかかわらず、現実にはほとんどこの分野で妖怪研究はなされていない。これを踏まえて、本…

『日本民俗学』に拙稿の科学民俗学・妖怪論文が載ります

『日本民俗学』最新号の287号pp. 1-35に、拙稿が掲載されます(たぶん10月頭にある日本民俗学会・年会の会場でも手に取ってみることができると思います)。タイトルは「俗信、科学知識、そして俗説――カマイタチ真空説にみる否定論の伝統」です。 要旨を転載…

信念と否定論についての人類学と民俗学

カマイタチ論文に紹介した事例は、字数制限の都合上、必要最小限にとどめてあります。『明治期怪異妖怪記事資料集成』から漏れた妖怪記事、科学啓蒙誌『学びの暁』、明治20年代医学雑誌のカマイタチ論文など、これまで知られていなかった文献が中心になって…

『世間話研究』掲載論文の補足

『世間話研究』第24号(2016年5月)に、「カッパはポセイドンである 近世後期における東西妖怪比較試論」と題する拙論を掲載させていただきました(pp.20-66)。おもに蘭学周辺の文献で、日本の妖怪とヨーロッパの怪物や動物がどのように比較されていたのか…

今のところ最古の「ヌリカベ」文献

九州日日新聞 大正10年1月21日付()は読みにくい部分のフリガナ、(?)は不鮮明で判読が難しかったところです。 木倉(きのくら)の怪 楠田祥 〔一〕塗り壁 肥後の御船と木倉の平野から、東の方宗心原の臺(?)地へ上る坂路の一つに「迫路」と名づけらる…

江戸時代の「天使」と「天狗」

年末年始の調べものの一環としてメモ的に。 キリシタン文書では、天使といえば「あんじょ」、悪魔といえば「天狗」と翻訳されていたが、蘭学隆盛期に入ると、天使といえば「天狗」ということになってしまった。宗教性が除去されすぎた結果、形態論的な比較し…

リッカルド・カポフェッロ『経験論的な驚異 幻想文学の歴史化1660-1760』

ちょっと気になる本があったので、その序論だけを翻訳してみました。 Riccardo Capoferro, 2011, Empirical wonder: Historicizing the fantastic, 1660-1760. 幽霊や怪物が経験的なものではなくなっていく過程、というか経験的なものとそうでないものとの分…

鎌鼬=真空説の初出

鎌鼬の正体が真空であるという説の初出はいつか? 今年の夏に出た別冊宝島の『日本の妖怪』(小松和彦・飯倉義之監修)では「昭和初期」と書かれている(p.70)。飯倉義之さんの2010年の論文「鎌鼬存疑」(『妖怪文化の伝統と創造』所収)では、井上円了の『妖…

妖怪論文が掲載されました・ウェブ上に公開しました

すでに2か月前の話になりますが、『現代民俗学研究』という雑誌の第6号に僕の論文が載りました。 タイトルは「妖怪の、一つではない複数の存在論―妖怪研究における存在論的前提についての批判的検討―」で、113-128ページに掲載されています。 冒頭の英文要旨…

「びしゃがつく」の出典

まえおき 柳田国男『妖怪談義』の「妖怪名彙」には、後に有名になる多くの妖怪が掲載されているが、柳田はそれぞれの妖怪のデータが何に由来するのか、必ずしも明記しなかった。小松和彦はこの点を問題視し、出典を明らかにしていくことによって柳田がどのよ…

日本怪異妖怪大事典「廣田龍平」担当項目の補遺1/5 インマオ、遠州七不思議、えんのこ、閻魔大王、置行堀、応声虫、蛙石、鐘の怪異、川ミサキ、鬼子母神、コソコソ岩、狛犬、鹿石、七人塚、十二神様

この記事がどういうものかについてはhttp://d.hatena.ne.jp/ryhrt/20130827/1377587908を見てください。原則として『日本怪異妖怪大事典』を手元に置いて読んでください。1. いんまお【犬魔王】p. 52「犬のような姿をした奄美群島の妖怪」。○ 「犬魔王」とい…

日本怪異妖怪大事典「廣田龍平」担当項目の補遺5/5 もうみ、モグラ、門助婆、問答石、やかん転がし、やかんづる、やざいどん、山あらし、山芋鰻、山猫、山ミサキ、ヤモリ、雪降り入道、雪ん坊、笑い女

この記事がどういうものかについてはhttp://d.hatena.ne.jp/ryhrt/20130827/1377587908を見てください。原則として『日本怪異妖怪大事典』を手元に置いて読んでください。61. もうみp. 545「青森県の八甲田山や岩木山に住んでいるとされた、恐ろしい化け物」…

日本怪異妖怪大事典「廣田龍平」担当項目の補遺 前説

少し前に『日本怪異妖怪大事典』がようやく出版社から届いたということで、自分の執筆した75の怪異妖怪項目について、書くときに参考にしたものや、書ききれなかったことについての追加説明みたいなのを書いてみることにする。説明文に書いてあるが事例に…

日本怪異妖怪大事典「廣田龍平」担当項目の補遺4/5 日和坊、ひるま坊主、風来ミサキ、袋下げ、鳳凰、棒振り、頬撫で、ほご釣り、法螺貝、枕小僧、ミサキ風、三つ目入道、ミミズ、宮ホウホウ、ムササビ

この記事がどういうものかについてはhttp://d.hatena.ne.jp/ryhrt/20130827/1377587908を見てください。原則として『日本怪異妖怪大事典』を手元に置いて読んでください。46. ひよりぼう【日和坊】p. 479-80「常陸の国の深山にいるという妖怪」。○ この項目…

日本怪異妖怪大事典「廣田龍平」担当項目の補遺3/5 納戸婆、二人坊主、抜け首、塗り壁、猫神、猫狸、猫憑き、ネロハ、野ぶすま、箸拾い坊主、バタバタ、般若、光る石、緋鯉、狒々

この記事がどういうものかについてはhttp://d.hatena.ne.jp/ryhrt/20130827/1377587908を見てください。原則として『日本怪異妖怪大事典』を手元に置いて読んでください。31. なんどばば【納戸婆】p. 416「納戸にいる、老婆の姿をした妖怪」。◎ 極端に解説を…

日本怪異妖怪大事典「廣田龍平」担当項目の補遺2/5 鍾馗、白犬、水精、太歳様、たんたんころりん、血染めの石、剣ミサキ、ててのすいき、とうしん、東せん坊、通り悪魔、虎、とんごし婆、ななめ、なんじ

この記事がどういうものかについてはhttp://d.hatena.ne.jp/ryhrt/20130827/1377587908を見てください。原則として『日本怪異妖怪大事典』を手元に置いて読んでください。 16. しょうき【鍾馗】p. 292「もとは中国の民間信仰で、疫病を追い払う神」。○ 僕は…

ちょっと軽めの篤胤妖怪論

『玉襷』七之巻からの引用。 ここに古学の意をよく得て、大倭魂を突き堅め、かれをも己をも知りてあるは、たとえ目の前に、ひょうすべ、見越し入道など出たらんも、人のならいはさるものにて、馬の放屁にも驚くことのあるなれば、見慣れぬものの、不意に出て…

タタミタタキとバタバタと、ムシロタタキとススハキと

柳田國男の「妖怪名彙」に、次のようにタタミタタキが紹介されている。 タタミタタキ 夜中に畳を叩くような音を立てる怪物。土佐ではこれを狸の所為としている(土佐風俗と伝説)。和歌山附近ではこれをバタバタといい、冬の夜に限られ、続風土記にはまた宇…

勘太郎火と勘五郎火

村上健司の『妖怪事典』には載っていないが、柳田国男の「妖怪名彙」にはひっそりと「勘太郎火」という妖怪が紹介されている(『全国妖怪事典』や『綜合日本民俗語彙』には載っている)。 オサビ 日向の延岡附近の三角池という池では、雨の降る晩には筬火と…

有漢のスネコスリ

『妖怪談義』などのスネコスリについてはこちらを参照。そちらに挙げた以外では『井原市史 民俗編』2001にスネコスリの話が載っていると化野燐が『怪』18で紹介しているが、これはまだ紹介されていないようだ。 狸のしわざと言われる股くぐり・脛こすりとい…

シバカキの原文(小ネタ)

『新訂 妖怪談義』の「シバカキ」 夜分に路傍で石を投げる怪物だという(玉名)。p.248 それに対する小松和彦の注(同書) 「玉名」が指示する出典不明。能田太郎「肥後南ノ関方言類語集 体言編」『方言と土俗』(第三巻第三号、一言社、一九三二年)に、「…

オラビソウケは存在しない

前回のあらすじ:柳田國男『新訂 妖怪談義』では、柳田が曖昧にしていた妖怪情報の出典を小松和彦が徹底的に調べて明らかにしている。それでも不明なものは多い。しかしじっくりと伝承地域とそこをフィールドワークした研究者を追っていけば、もしかしたら出…

googleで見つかる白坊主の出典

2013年1月に柳田国男の『新訂 妖怪談義』が角川ソフィア文庫から出た。これは人類学者の小松和彦が、柳田が不十分にしか示さなかった出典や当時の事情などに細かく注釈をつけたもので、その意味も込めて「新訂」がタイトルに付されている。 なかでも小松が力…

追記:なぜ「妖怪名彙」に『現行全国妖怪辞典』がないのか

要約:柳田國男が「妖怪名彙」を書いたとき、佐藤清明の『現行全国妖怪辞典』を参照したのは明らかなのに、柳田はそのことにまったく触れていない。しかし、二人には方言カードを介した交流があった。そうすると、柳田が佐藤の方言カードを直接参照して「名…

翻訳モーリス・ブロック2

「信念」についての昔からの人類学的問題 これとは別に、さらに根本的な問題がある。それは上に述べたことすべての背後に存在するものだ。つまり、反直観的か否かにかかわらず、宗教に取り組むときに「信念」[信仰]を中核的な問題とすることが、現在検討し…

翻訳モーリス・ブロック1

Maurice Bloch, 2005, Are Religious Beliefs Counter-Intuitive?, in Essays on Cultural Transmission, Oxford: Bergの翻訳。[]内は訳者による補足。説明などは最後まで行ったらします。宗教的信念は反直観的か人類学者は、一般公衆や一部の哲学者顧客向…

翻訳モーリス・ブロック3

様々に異なった超自然的信念と認知的態度 私が論じているのは、スペルベルとボイヤーが間違っているのはすべての宗教的な現れが認知的にも卓越的にも反直観的だと考えている点であり、それは宣教師がその手の信念しか探さなかったことと同断だ、ということで…