12月27日、青土社から『〈怪奇的で不思議なもの」の人類学 妖怪研究の存在論的転回』が出版されました。買ってください。 www.seidosha.co.jp すごくおしゃれな装丁になっています。かなり好評です。 本書は、2017年から2023年にかけて雑誌などに書いてきた…
現在(2022年度後期)、某大学で「社会学」と称して「異界と異世界の社会科学」という授業をやっています。そろそろレポートの季節になってきたので、学生のために、授業の参考にした資料を列挙したページをLMS内に作りました。もしかすると異界や異世界につ…
拙著『妖怪の誕生 超自然と怪奇的自然の存在論的歴史人類学』が、2022年5月27日、青弓社より出版されます。筑波大学に提出した博士論文をもとにしているのですが、本文を6割弱まで圧縮したうえで、新たに「くねくね」の節を追加して、さらに議論の流れを多少…
日本の文化人類学関係者しか興味ないと思いますが、『妖怪の誕生』のもとになった博士論文の主査である内山田康・筑波大学教授(当時)が、主査として審査した博士論文が書籍化されたものは、おそらく以下のとおり。まだ書籍化されていない博論も数本ありま…
5月18日、『オカムロさん』というホラー映画が公開されることが告知された。映倫審査拒否なる宣伝文句が変な意味で話題になっているが、それはともかくとして、この「オカムロさん」、「江戸時代から伝わる」という触れ込みだが、——確かにそういう伝承はある…
博士論文をベースにした拙著『妖怪の誕生 超自然と怪奇的自然の存在論的歴史人類学』が5月27日に青弓社より発売となります。 www.seikyusha.co.jp まだオンライン書店などでは予約できないようなので、GW終わりぐらいまではお待ちください。 税込み4400円と…
youkai.hatenablog.jp これの続き。 話者(narrator)、そして収集家の履歴 民俗資料館にあるナラティヴの話者を調査してみるのが興味深いのは確かだ。悪魔譚を知っていて、また悪魔について語ったのは、どういった人々なのだろうか。私たちは話者の名前をそ…
元論文の詳細→https://doi.org/10.1080/0015587X.2020.1733313 手短な概観 民俗資料館(folklore archives)は、過去についての資料を収蔵している。そうした資料は、概してそんなに価値がないと見なされず、たやすく記録されないままになってしまう環境から…
www.jstage.jst.go.jp 僕は、この学会発表の要旨では「クネクネ」のことを説明していますが、字数の関係でWikipedia以外の出典を示しておらず、僕自身が学会でどういう発表をしようとしていたか、Wikipedia「くねくね」に当時なにが書かれていたのかの出典に…
某博論では、こういうことを書きました。以下引用。
昨日に引き続き、KnowYourMemeのページから、異世界感に関係する項目を訳してみます。今回は2つ。「ヤバイ画像」と「哀愁感のある画像/境界空間」です。後者はAesthetics Wikiの項目もすでに訳しています。 というわけで、さっそく訳出してみたいと思います…
昨日の「裏の部屋」に続きまして、より一般的にそういった感覚を指す「境界空間」と「放課後・終業後」というページをAesthetics Wikiというところから翻訳してみます。 Aesthetics Wiki(日本語表記は「美学リスト」)は最近作られたWikiのようで、正直よく…
(2022年2月7日追記) YouTubeやツイッターなどでバックルームの動画がバズっていて、ここへのアクセスも増えています。2020年末にこの記事を書いたあと、さらに調べたことに基づいて、『早稲田文学』2021年秋号の「ホラーのリアリティ」特集に「ノスタルジ…
2020年後期、某大学(東洋大ではない)で「妖怪と怪異の民俗学」という授業を非常勤で受け持つことになりました。公募が出たとき一部で話題になったやつです。正直、僕以外に応募した人がいるのかどうか分からないぐらいニッチな、しかし僕にとってはこれ以…
非常勤でやっている講義授業について、いまやっていることをメモしておく。 まず、オンライン授業の方式については、オンデマンド(録画配信)授業をする先生方が多い印象を受ける。だが、僕は一人でパソコンに向かって話すことに耐えられないので、ライブ授…
お遊びです。 2000年から2001年にかけて、小松和彦監修のもと出現した伝説的な論文アンソロジー、『怪異の民俗学』全8巻。 しかし出版から20年経ち、怪異・妖怪研究も大きく様変わりした。新たなトピックが展開する一方で、埋もれた研究も発掘が続けられてい…
前にも詳しいことを書いたのだが、西洋近代以外の文化事象に「超自然」概念を用いることには問題がある……という議論は、ヨーロッパでは19世紀後半から続けられている。 では、そもそも、なんでそういったもの――妖怪、幽霊、冥界、呪術、魔物、神々など――は超…
1.問題の要点 2.それは炎上だったのか? 3.ツイッター民俗への誤解 4.「風評被害」は強い言い方でしょう? 5.炎上理由――民俗を愛好する輩からの反発だ! 6.妖怪研究者とマニアが結託している? 7.発狂倶楽部という親密圏 8.妖怪研究者はマニ…
アメリカ民俗学でいうlegend trip、「肝試し」と訳しましたが、先ほどの記事でも名前が出ていたビル・エリス(Bill Ellis)がAmerican Folklore: An Encyclopedia (2006、編者はブルンヴァン)にその項目を執筆していたので、訳出します。例によって文献一…
アメリカ民俗学は、「都市伝説」がそうなのですが、日本民俗学でいう「世間話」にあたる説話も「伝説」(legend)に入れています。そうした伝説は、どのようにして人から人へと伝えられるのか? 基本的には口頭であったり文章であったり、言葉を使うものが多…
以前から、日本民俗学の「世間話」という概念は、アメリカ民俗学でいうメモレート(memorate)に相当するのではないかということを話していたのですが、2009年に出た『女性の民俗伝承・民俗生活百科事典』(英語)に簡単なmemorateの項目があったので訳して…
下の2つの記事の続き(最終回)。 youkai.hatenablog.jp youkai.hatenablog.jp 日本のコンテクストでの超自然概念批判 前回と前々回では、おもに文化人類学(宗教人類学)において、超自然概念がどのような意味で用いられ、どのような観点から普遍的な適用…
前回の「超自然概念をめぐる論争①」の続きです。 youkai.hatenablog.jp ある意味、今回が「論争」編かな? 超自然概念の批判 前回の終わりに提示した普遍主義的用法は、自然的/超自然的という存在論的区分が、「それなりのやり方で」(ルース・ベネディクト…
妖怪を論じるとき使われることの多い超自然(supernatural)概念。しかし、この概念は本来カトリック神学に由来するものだった。西洋ローカルなこの概念をどれだけ他のコンテクストに広げることができるのか、そもそもできないのかについて、実は(特に人類…
「ゆきひら」といえば『食戟のソーマ』の主人公の名字……でもあるが、一般的には調理器具、鍋の一種である。キッチンが使われている日本の家庭ならどこにもあるといっても過言ではない、ポピュラーな道具だ。漢字では行平とも雪平とも書くので、ここではユキ…
本居宣長は、上田秋成や平田篤胤とちがって積極的に妖怪的なものを語ろうとはしなかった。いちおう「カミ」の定義のなかで妖怪的なものを列挙してはいるが、付属品的な扱いでしかない。(前に紹介した↓) youkai.hatenablog.jp しかし、門人との問答のなかで…
近世国学の妖怪論はどうなっていたのか。平田篤胤が語りすぎたので、一人だけ有名になってしまっているが、前期国学の人々も、当時の多くの知識人と同じように、通りすがりに程度であるが、怪異・妖怪について語っているところはある。ちゃんと調査したわけ…
三遊亭円朝が『真景累ヶ淵』(活字1888)の始めに「幽霊と云うものは無い、全く神経病だと云うことになりましたから、怪談は開化先生方のお嫌いなさる事でございます」と語ったように、「妖怪や怪談なんてものはない!」と否定する言説は明治時代の「文明開化…
一昨日、「平田派から柳田國男までの国学に見えたる妖怪論」と称して、現在進行中の某原稿の一部を転載したのだが、そういえば1年ほど前、「異類の会」で発表した時も物集高世を引いていたなあ、と思い出したので、また部分転載してみる。当時の発表タイト…
平田篤胤が今で言うところの「妖怪」に多大な関心を持ち、『鬼神新論』(1805)、『稲生物怪録』(1806)や『仙境異聞』(1822)、『古今妖魅考』(1828)などを著したことは比較的よく知られている。しかし、彼の学統たる平田国学やその周辺の国学者たちも…